【ホテル】Number 11(ナンバー・イレブン)|ジェフリー・バワの原点に泊まるコロンボ

ナンバー・イレブン NUMBER11 / スリランカ(コロンボ)

スリランカが生んだ世界的建築家、ジェフリー・バワ。 その名前に馴染みはなくても、アマンリゾーツの創業者エイドリアン・ゼッカや、アマンリゾーツの建築家ケリー・ヒルが影響を受けた、と聞けば、彼がいかに卓越した才能の持ち主であったかを想像できるでしょう。今では多くのホテルで一般的になった「インフィニティー・プール」も、その原点はバワの発想にあると言われています。

「ヘリタンス・カンダラマ」や「ジェットウィング・ライトハウス」など、バワが手がけた名ホテルは数あれど、バワに興味を持ったなら、ぜひ訪れてほしい場所が二つあります。一つは週末を過ごす別荘でありバワが生涯かけて作り上げた理想郷「ルヌガンガ」、そしてもう一つは今回ご紹介する「Number 11(ナンバー・イレブン)」です。

「バワの好きだったもの」が作る空気感

コロンボ中心部を走る道を一本入ったところにある閑静な住宅街に佇む「Number 11(ナンバー・イレブン)」は、バワが実際に仕事場として、そして住居として使用していた建物です。もともと4軒並びだったうちの1軒を1959年に借り、それから増改築を加えて現在の姿になりました。

バワが暮らしたそのままの姿で残されており、現在はジェフリー・バワ財団の管理により見学ツアーも行われているこの場所。実は、1日2組限定で宿泊することも可能なのです。

宿泊施設とはいえ、一般的なホテルとは異なり、看板も目印もありません。ガレージを開けるとバワの愛車、ロールス・ロイスが静かに出迎えてくれます。

壁の太陽神をモチーフにしたような作品が、ロールスロイスのエンブレムを際立たせる

「Number 11」は、バワの本質を垣間みることのできるきわめて貴重な空間です。

ここにはバワ自身が集めたアンティークやアート、家具調度品が当時のまま配されています。

バワのセンスの素晴らしいところは、ヨーロッパやアフリカ、そしてスリランカをはじめとしたアジア地域など、多様な文化色や宗教性が混在しているにも関わらず、空間に一貫性を持たせられる点です。それぞれの収集品は、彼独自の配置と見せ方によって部屋と美しく調和し、落ち着いた居心地のよさを生み出しています。

バワの収集品がセンスよく飾られたリビングルーム。不思議と統一感がある空間は、落ち着いた居心地の良さを感じる

また、馬やフクロウなどバワの好んだモチーフや、「ヘリタンス・カンダラマ」をはじめとするバワ建築にみられるデザインのプロトタイプを発見できるのもこの場所ならではの楽しみです。バワは「ルヌガンガ」やこの「Number 11」を、建築思想を試すための実験の場としていたのです。

バワ御用達のアーティスト、ラキ・.セナナヤケによるフクロウのオブジェ。ヘリタンス・カンダラマのフクロウはこの何倍の大きさだろうか?
屋上に上がる階段。手すり一つとっても、その後のバワ建築に生かされているのがわかる

こちらはもう一つのゲストルーム。どこを切り取っても、スリランカの伝統とヨーロッパの文化、洗練とプリミティブな感覚が見事なバランスで共存しています。

ムスリムと英国の血が混じった父親と、オランダ出身の母親の裕福な両親の元に生まれたバワ
幼い頃から度々訪れていたヨーロッパで様々な文化や芸術に触れ、独特のセンスを身につけたのだろう

光と影~建築が自然のリズムにゆだねる瞬間

先ほども触れた通り、この建物は4軒を少しずつ増改築していったため、内部は迷路のように入り組んだ構成になっています。玄関を抜けさらに建物を奥に進むと、その様相が徐々に姿を現してきます。

光と影を巧みに操るその手法から、バワはしばしば「光と影の建築家」と称されます。
建物に差し込む光の表情を常に意識し、その移ろいまでもデザインの一部として取り入れていました。
「あと1時間ほどしたら、もう一度戻ってきてください。まったく違う景色がご覧になれますよ」と、スタッフの方が教えてくれました。

白い壁が際立つ回廊部分。元は家と家を繋ぐ通路だった
回廊の奥の坪庭。差し込む光も芸術作品のよう
回廊の奥の坪庭。差し込む光も芸術作品のよう
こちらの椅子もバワ・ホテルの試作品
光が作り出す芸術に、思わず目を奪われる

バワは意図的に、自然と室内の境界を感じさせないデザインを心がけていました。それは、自然を支配するのではなく、建築が自然のリズムに身を委ねる、ということ。その結果として「部屋の中にいても、自然が続いている」という感覚が生まれるのです。

屋内と屋外の境界が曖昧になるように意図された建築デザイン

しかし、雨季には大量のスコールが降るこのスリランカで、こんなふうに壁や仕切りのないオープンエアのコートヤードやベランダは果たして大丈夫なのだろうか。部屋や家具が濡れてしまわないのかと心配になりスタッフの方に尋ねてみたところ、それもすべて計算のうえでデザインされているのだとか。

そこにもバワの知性と経験が息づいています。

雨が降っても室内が濡れることのないよう、綿密に計算されている

光の芸術と夜の静けさを体験しながら、ジェフリー・バワという建築家の思想に一晩身を預けてみる。
「Number 11」はぜひ、宿泊してこそ訪れてほしい場所です。

PINKでは、ナンバー11をはじめ、スリランカ内の様々なバワ建築のホテルや施設の宿泊予約(1泊~)を承っております。お気軽にお問合せください。