日本

ひとつひとつ違うお皿〜井山三希子展

料理人の友人が皿を買いたい、というのだが、
「たぶん朝から並ばないと買えないので不安だし、ちょっと付き合って欲しい」
というので、よくわからないままある日の朝
いつも起きる時刻に家を出て、二子玉川の小さな食器店に脚を運んだ。

朝9時。整理券を渡された。19.20番だった。
店のオープンは11時だという。
え?もう来てる人いるんだ、と思った。

さて、11時前になり、再び店を訪れた。

小さな店の前に、人だかりが出来ていた。
知らない女性から「何番なんですか?」などと声を掛けられ、100番の整理券を見せられた。
なんだ?この人気。すごい熱気。
女子ばかりと思いきや男性もいる。
きっと皆、この作家さんの熱烈なファンなのだろう。
整理券の番号順に一人ずつ呼ばれてから、店に入る。ショーウインドウを通しても伝わってくる店内の買い物熱気に、自分が入れる頃には売り切れてしまうのではないか、と危機感を感じた。
と思ったら、お一人様4枚まで、の制限付きだった。
その内友達の番になり、私も店内へ。

形はとてもシンプルで使いやすいそうな3種類のみ。色もそれぞれの形に3種類の色。
けれどよく見ると、ひとつひとつ色ムラがあったり、厚みや形などもわずかに違う。

つまりひとつひとつが手作りなのである。

料理という、究極の手作り職人だからこそ、こだわる、手作りのお皿たち。
4枚で2万を超える、決して安いとはいえないお皿に、朝から並んで買い求める人たち。

ひとつひとつ違う。
作者の「思い」が込められた丁寧な手作りの温もりが感じられる。
だからこそ愛おしく、優しく、人を惹きつけるのだ、と

ふと自らの仕事に思わず投影して、一人で得心した。
PINKが手作りの旅をやっているのは、間違ってないのだな、と。

なかなか遭遇出来ない機会を味あわせてくれた友人に感謝しつつ、付き合いのご褒美の寿司に満足して帰宅した、ある日の昼だった。